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特集 新興・再興感染症と感染症対策
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著者: 澤洋文1
所属機関: 1北海道大学人獣共通感染症リサーチセンター分子病態・診断部門
ページ範囲:P.286 - P.286
文献概要
Stephen S. Morseは1995年の『Emerging Infectious Diseases』という雑誌の創刊号の「Factors in the Emergence of Infectious Diseases」という論文の中で,新興感染症(emerging disease)を「新規に出現した,もしくは以前から存在していたが,急速に罹患率や出現範囲を拡大した感染症」と定義しています。また,再興感染症(re-emerging disease)は「出現頻度が減少し制御されていたが,再度公衆衛生上の問題となった感染症」と考えられています。新興・再興感染症は,その疾病の犠牲となる症例の存在という直接的な影響だけでなく,経済影響や社会不安など間接的に国際社会全体に大きな影響を与えることも重要な問題となっています。CEDA(Committee for Economic Development of Australia)の報告によると,前述したエボラ熱については2014年から2015年の終わりまでに320億米ドル(3.8兆円)以上の資金が投入されることが試算され,2003年のSARSの際には約400億米ドル(4.7兆円)の経済的損失が生じたとされています。平成26年度のわが国の一般会計予算が約95.9兆円であることから,単一疾患の対処にわが国の一般会計予算の約5%を投じる必要性があったことになります。
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