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文献詳細

雑誌文献

生体の科学66巻4号

2015年08月発行

特集 新興・再興感染症と感染症対策

C.細菌

わが国の食用動物由来耐性菌の現状とその対策

著者: 田村豊1

所属機関: 1酪農学園大学獣医学群食品衛生学

ページ範囲:P.322 - P.326

文献概要

 Flemingによりペニシリンが発見されて以来,抗菌薬はヒトの感染症の治療薬としてなくてはならないものとなっている。一方,抗菌薬は医学のみならず獣医学分野でも盛んに利用されており,特に安価で安全な畜産物の安定的な生産に大きく貢献している。しかし,抗菌薬が畜産分野で汎用されることに伴い,薬剤耐性菌が選択・増加したことも事実である。近年,食用動物に使用される抗菌薬により選択された耐性菌が,食物連鎖を介してヒトの健康に影響することが懸念され,その封じ込め対策を検討する多くの国際会議が開催されている1)。当初は,食用動物への抗菌薬の使用により出現した耐性菌がヒトの健康に影響する可能性は否定できないが,科学的な根拠は明らかでないとされてきた。しかし,最近開催された世界保健機関(World Health Organization;WHO),国際連合食糧農業機関(Food and Agriculture Organization;FAO),国際獣疫事務局(World Organisation for Animal Health;OIE)共催の国際会議では,菌種は限定され程度は不明ながら,食用動物に使用される抗菌薬によって耐性菌が選択・増加し,それがヒトに伝播してヒトの健康に影響する十分な証拠が蓄積されていると結論付けられた2)。したがって,国際機関では既に食用動物由来耐性菌のヒトに対するリスクは明らかであり,そのリスク低減のためのリスク管理の時代に突入している。このような国際的な動きを受け,わが国でも家畜衛生分野における薬剤耐性モニタリング制度の発足,動物用抗菌薬や抗菌性飼料添加物のヒトの健康への影響に対するリスク評価の実施,そのリスクを低減化するリスク管理対策の実施などの様々な対策が実施されている。そこで本稿では,食用動物由来耐性菌に対するわが国の対応状況を紹介する。また,合わせて食用動物由来耐性菌の検出状況を紹介し,抗菌薬の慎重使用(prudent use)の重要性を指摘したい。

参考文献

.37:635-639, 2010
2)FAO/OIE/WHO:Joint FAO/OIE/WHO expert workshop on non-human antimicrobial usage and antimicrobial resistance:scientific assessment. Geneva, December 1-5, 2003
3)OIE:OIE International Standards on Antimicrobial Resistance. 17-27, 2003
4)WHO:WHO Global principals for the containment of antimicrobial resistance in animals intended for food. Geneva, June 5-9, 2000
. 170:448-441, 2014
6)WHO:Use of quinolones in food animals and potential impact on human health, Report and proceedings of a WHO meeting. Geneva, June 2-5, 1998

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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