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増大特集 細胞シグナル操作法 Ⅰ.分子からみたシグナル操作法 1.セカンドメッセンジャー
Nitric oxide(NO)
著者: 赤池孝章1 藤井重元1
所属機関: 1東北大学大学院医学系研究科環境保健医学分野
ページ範囲:P.396 - P.397
文献購入ページに移動生体内NOは,NO合成酵素(NO synthase;NOS)の作用により,基質であるL-アルギニンの酸化反応により産生される。哺乳類のNOSには,恒常的に発現している神経型NOS(neuronal NOS;nNOS),血管内皮型NOS(endothelial NOS;eNOS)と,炎症性サイトカインなどにより発現が誘導される誘導型NOS(inducible NOS;iNOS)の三つのアイソフォームがある。
NOのシグナル伝達経路は,可溶性グアニル酸シクラーゼ(soluble guanylate cyclase;sGC)の活性化を介したcGMPをセカンドメッセンジャーとする古典的NO/cGMP経路と,NOと活性酸素との反応により生成する活性酸化窒素種(reactive nitrogen oxide species;RNOS)がかかわる新規経路に大別される(図)。後者には,RNOSによるアミノ酸,ヌクレオチド,脂質の酸化・ニトロソ化・ニトロ化が関与する。例えば,cGMPがニトロ化された8-ニトロ-cGMPは親電子性を有し,タンパク質中のシステイン残基にcGMP構造を付加する翻訳後修飾(タンパク質S-グアニル化)を行う。転写調節因子Keap1や低分子量Gタンパク質H-RasのS-グアニル化は,酸化ストレス適応応答や細胞老化,オートファジー誘導などにかかわる(図)。興味深いことに,最近8-ニトロ-cGMPのシグナル活性が,システインパースルフィドなどの活性イオウ分子種により制御されていることが明らかになった。NOのシグナルは,活性酸素や活性イオウ分子と相互作用をしながら精緻に制御されていると考えられる。
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