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文献詳細

雑誌文献

生体の科学66巻5号

2015年10月発行

文献概要

増大特集 細胞シグナル操作法 Ⅰ.分子からみたシグナル操作法 1.セカンドメッセンジャー

活性酸素

著者: 田久保圭誉1

所属機関: 1国立国際医療研究センター研究所生体恒常性プロジェクト

ページ範囲:P.398 - P.399

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 分子状酸素は好気性生物のエネルギー産生に必須である。酸素はその代謝過程で四電子還元される。生体内での還元過程などで産生される酸素分子より反応性の高い酸素種を総称して活性酸素種(reactive oxygen species;ROS)と呼ぶ。厳密には,スーパーオキサイド,過酸化水素,ハイドロキシラジカル,一重項酸素を活性酸素と呼ぶが,広義にはより多くの種類が含まれる。一方,不対電子を持つ酸素種は不安定で反応性が大きく,フリーラジカルと呼ばれる。広義にはこうしたフリーラジカルも含めてROSと呼ぶ。スーパーオキサイドやハイドロキシラジカルは不対電子を持つため,狭義のROSと呼ばれる。一方,過酸化水素は不対電子を持たず,フリーラジカルではない。ただし,鉄と反応することで一電子還元された過酸化水素は極めて反応性が高いハイドロキシラジカルを生じる(Fenton反応)ため,活性酸素としては重要な位置付けにある。放射線や紫外線,薬剤など外的要因でも活性酸素種は生じるが,細胞内でのROS産生は特にミトコンドリアの電子伝達系や好中球などのNADPHオキシダーゼが担う。活性酸素やフリーラジカルは特異的な標的を持つことは少ないとされる。むしろ非特異的に核酸,脂質,アミノ酸など細胞内外の物質を標的にする。ROSはサイトカインシグナルの下流などでシグナル分子としての機能を果たす一方,過剰なROS産生による酸化ストレス負荷は細胞機能を障害し,細胞老化や細胞死などを誘発する。このように多彩なROSの検出・操作技術は細胞内シグナルの理解のために不可欠である。

参考文献

. 46:126-134, 2010
. 10:1923-1940, 2008
. 117:2133-2144, 2007

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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