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文献詳細

雑誌文献

生体の科学66巻5号

2015年10月発行

文献概要

増大特集 細胞シグナル操作法 Ⅰ.分子からみたシグナル操作法 2.Gタンパク質

三量体Gタンパク質

著者: 堀部修平1 伊東広1

所属機関: 1奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科分子情報薬理学

ページ範囲:P.400 - P.401

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 三量体Gタンパク質は神経伝達物質やホルモン,光など多くの細胞外情報を細胞内に伝達する役割を担う。α(Gα),β(Gβ),γ(Gγ)の三つのサブユニットから成るヘテロ三量体を形成し,不活性型のGαにGDPが結合している。細胞膜においてGタンパク質共役受容体(G protein-coupled receptor;GPCR)と共役し,GPCRにホルモンなどのリガンドが結合するとGPCRの構造変化が起こり,共役するGαからGDPが解離し,そのかわりに細胞内に豊富に存在するGTPがGαに結合する。GTP結合GαはGβγと離れ,遊離したGαおよびGβγは下流のエフェクターへシグナルを伝達する。GTPが結合したGαは,Gα自身の持つGTPase活性によりGTPをGDPとリン酸へ分解する。GDP結合GαはGβγと再結合して元の三量体へと戻る。このように三量体Gタンパク質は可逆的な分子スイッチとして働く。
 GαはGαs,Gαi,Gαq,Gα12/13の四つに大別され,それぞれ下流因子が異なる(図)。Gタンパク質がそれぞれの下流因子を活性化することによって,細胞遊走や神経伝達物質の放出,遺伝子発現など,様々な細胞応答に関与する。
 Gタンパク質の活性はGDP-GTP交換反応を促進するGEF(guanine nucleotide exchange factor)と,GTPase活性を高めるGAP(GTPase activating factor)により制御される。GPCRがGEFとして働くのに対して,RGS(regulator of G protein signaling)が三量体Gタンパク質のGAPとして働く。近年,Ric-8と呼ばれる非受容体型のGEFの存在も明らかとなった。また,Ric-8はGαのユビキチン化を抑制する1)。Gタンパク質シグナルの制御の一端として,ユビキチン化を介したプロテアソーム系によるGタンパク質の量的な調節機構が判明した。

参考文献

. 285:11114-11120, 2010
. 454:515-523, 2013
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. 21:71-75, 2015
. 58:794-803, 2015

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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