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文献詳細

雑誌文献

生体の科学66巻5号

2015年10月発行

文献概要

増大特集 細胞シグナル操作法 Ⅰ.分子からみたシグナル操作法 3.キナーゼ

古典的MAPキナーゼ経路

著者: 青木一洋1

所属機関: 1京都大学大学院医学研究科時空間情報イメージング拠点(特定准教授)

ページ範囲:P.414 - P.415

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 古典的MAPキナーゼ経路(mitogen-activating protein kinase pathway;MAP kinase pathway)は,古典的MAPキナーゼであるERK1/2(extracellular signal-regulated kinase 1/2)を活性化する一連のシグナル伝達経路を指す。
 増殖因子などにより低分子量Gタンパク質RasがGTP結合型になり活性化されると,MAPKKK(MAP kinase kinase kinase)であるRafと結合し活性化する。活性化したRafはMAPKK(MAP kinase kinase)であるMEK(MAPK/ERK kinase)をリン酸化し,活性化する。活性化MEKはERKの活性化ループに位置するチロシンとスレオニンを二重リン酸化することでERKを活性化する。活性化したERKは,転写因子や他のキナーゼをリン酸化することで細胞増殖や分化といった表現型を誘導する。この経路を調整する制御因子(足場タンパク質など)やフィードバック制御の関与も報告されている。
 古典的MAPキナーゼ経路を構成する分子の多くは,それらの活性化状態に応じて細胞内局在が変化する。不活性化状態のRafは閉じた構造をとって細胞質に局在しているが,主に形質膜に局在するRasと結合することで形質膜へと移行し,更に開いた構造へと変化する。そこにMEKが結合することでMEKへのリン酸化を誘導する。ERKは不活性化状態ではMEKなど細胞質に局在する分子と結合することで細胞質に局在するが,活性化されると核内へと速やかに移行する。
 KRas遺伝子やBRaf遺伝子といった古典的MAPキナーゼを構成する遺伝子の活性化型変異がヒトの悪性腫瘍において高頻度に見いだされており,既に幾つかの悪性腫瘍において古典的MAPキナーゼ経路を特異的に抑制する分子標的薬が抗癌剤として利用されている。

参考文献

. 464:427-430, 2010
. 6:251-255, 2005
. 157:1724-1734, 2014
. 155:1422-1434, 2013
. 52:529-540, 2013

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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