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文献詳細

雑誌文献

生体の科学66巻5号

2015年10月発行

文献概要

増大特集 細胞シグナル操作法 Ⅰ.分子からみたシグナル操作法 3.キナーゼ

PI3キナーゼ-Akt経路

著者: 樋口麻衣子1

所属機関: 1東京大学大学院薬学系研究科分子生物学教室

ページ範囲:P.418 - P.419

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 PI3キナーゼ-Akt経路(以下PI3K-Akt経路)は,細胞外からのシグナルを細胞内に伝える主要な経路の一つである。PI3K-Akt経路は,EGF(epidermal growth factor)やPDGF(platelet-derived growth factor)などの増殖因子やインテグリンを介した細胞接着など,様々な刺激により活性化され,細胞の生存促進,細胞増殖・大きさの制御,細胞運動,代謝,個体の寿命の制御など,実に様々な生命現象に関与することが知られている。
 増殖因子などの刺激により細胞膜上に移行し活性化したPI3Kは,細胞膜の構成成分であるイノシトールリン脂質のイノシトール環の3位をリン酸化してPI(3,4)P2,あるいはPI(3,4,5)P3を産生する。すると,AktのPHドメインが主にPI(3,4,5)P3に結合することによってAktは細胞膜へ移行する。そして,細胞膜近傍でAktはPDK1およびmTORC2(rictor-mTOR複合体)によりそれぞれThr308とSer473の二つの部位をリン酸化されて活性化し,下流の様々な基質のリン酸化を介して細胞の生存,増殖などの生命現象を制御する(図)。
 Aktには三つのアイソフォーム(Akt1,Akt2およびAkt3)があり,アミノ酸相同性は非常に高い。これら三つのアイソフォームは,重複した機能と異なる機能を持つことが報告されている。様々な機能を持つAktが,それぞれのコンテクストによりどのように機能を使い分けているのかは非常に興味深い問題であるが,Aktの機能を選択的に制御するスキャフォールド分子の存在や,アイソフォーム特異的な機能制御メカニズムについて明らかにされつつある。

参考文献

. 645:219-235, 2010
. 39:9-20, 2014
. 7:973-975, 2010
. 7:206-208, 2010
. 11:603-604, 2014

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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