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増大特集 細胞シグナル操作法 Ⅰ.分子からみたシグナル操作法 3.キナーゼ
細胞増殖因子・チロシンキナーゼ受容体型
著者: 間野博行1
所属機関: 1東京大学大学院医学系研究科細胞情報学分野
ページ範囲:P.426 - P.427
文献購入ページに移動受容体型チロシンキナーゼの多くは,1回膜貫通型受容体であり,細胞外でリガンドと結合し,細胞内に酵素活性領域がある(図)。例外はインスリン受容体ファミリーで,例えばインスリン受容体は単一ペプチドとして翻訳された後に,分解されてα鎖とβ鎖に分かれ,S-S結合でつながる。
受容体型チロシンキナーゼは,リガンド依存性に二量体化(あるいは多量体化)し,酵素活性が上昇する。リガンドが結合して二量体化した受容体型キナーゼは互いのキナーゼをリン酸化し合い(自己リン酸化と呼ばれる),酵素領域がATPと結合可能になってキナーゼ活性がオンになる2)。一般に自己リン酸化されるチロシン残基以外のチロシンも複数リン酸化され,セカンドメッセンジャータンパク質群のSH2ドメインのドッキング部位になる。受容体型チロシンキナーゼから発せられる増殖シグナル経路は,RAS-MAPK経路,PI3-kinase経路,phospholipase C経路などがある。
受容体型チロシンキナーゼの恒常的活性型変異はしばしばがんの原因となる。例えば上皮成長因子受容体(epidermal growth factor receptor;EGFR)は,酵素活性領域内の点突然変異・内部欠失が後天的に生じ,肺がんの原因となる3)。同様にALKキナーゼ(anaplastic lymphoma kinase)は染色体転座inv(2)(p21p23)の結果,EML4(echinoderm microtubule-associated protein-like 4)と融合してEML4-ALKとなって肺がんを生じ4),HER2(ERBB2)キナーゼは遺伝子増幅によって乳がんの原因となる。いずれも特異的な分子標的薬が臨床の場で用いられている。
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