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文献概要
増大特集 細胞シグナル操作法 Ⅰ.分子からみたシグナル操作法 3.キナーゼ
Protein kinase C(PKC)
著者: 吉川潮1
所属機関: 1神戸大学自然科学系先端融合研究環バイオシグナル研究センター
ページ範囲:P.430 - P.431
文献購入ページに移動PKCサブタイプはアミノ末端側に調節ドメイン,カルボキシル末端側に触媒ドメインを持ち,前者の構造モチーフから3群に分類されている(図)1)。cPKC(c;classicalあるいはconventional)群はPKCの発見以来,生化学的検討が進められてきた酵素に相当する。調節ドメインにはこの群の間で相同性を示す領域が2か所存在し,それぞれC1領域,C2領域(ConservedまたはCommon)と命名された。C1領域はZnフィンガー様モチーフの2回繰り返し構造を含むジアシルグリセロールおよびホルボールエステルの結合部位,C2領域はCa2+を介したリン脂質結合部位であり,両領域ともPKC以外のタンパク質にも構造モチーフとして存在する。nPKC(n;novelあるいはnew)群はその酵素活性にCa2+を必要とはしないものの,ジアシルグリセロールにより活性化されホルボールエステルの結合能を有する。調節ドメインにはC1領域が存在し,アミノ末端にC2領域に類似したリン脂質結合領域が存在する。aPKC(a;atypical)はZnフィンガー様モチーフを持つもののジアシルグリセロールにより活性化されないが,発見の経緯と構造の特徴からこの名称が用いられている。一方,触媒ドメイン内とカルボキシ末端領域には活性化ループ,ターンモチーフおよび疎水性モチーフと呼ばれるリン酸化部位が存在する。これらの部位は構成的にリン酸化を受けており,その変動が酵素活性の制御にかかわるというよりは触媒活性の発揮に必要な修飾反応である。なお,PKCファミリーは基質特異性が広く試験管内では多くのタンパク質をリン酸化する。また,PKCはサブタイプごとに組織発現,生化学的性質,結合タンパク質,細胞内局在・挙動に差異がみられることから,それぞれが特異的なシグナルの伝達に対応している可能性が高く,様々な観点から各PKCサブタイプがかかわる細胞内シグナル機構の解析が行われている。
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