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増大特集 細胞シグナル操作法 Ⅰ.分子からみたシグナル操作法 3.キナーゼ
Mammalian target of rapamycin(mTOR)
著者: 福田智行1 塩﨑一裕12
所属機関: 1奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科細胞シグナル研究室 2カリフォルニア大学デービス校微生物学・分子遺伝学科
ページ範囲:P.436 - P.437
文献購入ページに移動mTORC1は触媒サブユニットmTORに加え,Raptor,mLST8,PRAS40,DEPTORを含み,成長因子や栄養に応答して活性化し,細胞の成長や増殖を正に制御する。mTORC1の代表的な標的基質として,タンパク質合成を調節するp70-S6Kと4E-BP,オートファジーにかかわるULK1などが挙げられる。一方,mTORC2はRictor,mSIN1,mLST8,PRR5/5L,DEPTORを含み,インスリンや成長因子刺激,あるいはストレス下で細胞の生存,糖の取り込み,細胞形態を制御する。Akt,SGK,PKCαといったAGCファミリーに属するキナーゼがmTORC2の標的として知られている。
mTOR複合体の活性は厳密かつ複雑に制御されており,その分子メカニズムの全貌はいまだに不明である。主要なmTORC1制御因子として,低分子量GTPaseであるRagとRhebが同定されている。RagとRhebはそれぞれアミノ酸と成長因子による刺激に応じて結合ヌクレオチド(GTP/GDP)をスイッチし,mTORC1活性を正負に制御する。他方,mTORC2の活性制御に関する知見は乏しく,分裂酵母を用いた解析から,やはり低分子量GTPaseが制御に関与する可能性が示唆されている2)。
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