増大特集 細胞シグナル操作法
Ⅰ.分子からみたシグナル操作法 4.その他
Notchシグナル
著者:
溝口貴正1
伊藤素行1
所属機関:
1千葉大学大学院薬学研究院生化学研究室
ページ範囲:P.440 - P.441
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Notchシグナル伝達経路は,多細胞生物において種々の組織の細胞増殖・死,分化,生理機能に関与する。Notchは細胞膜貫通型受容体であり,隣接細胞で発現するDelta,Jaggedといった膜結合型リガンドとの結合で細胞間情報伝達を行う(図)。Notch受容体は,Golgi体でのFurinによるS1切断,Fringeなど糖転移酵素による糖鎖修飾の後,膜表面上に到達する。Mib1ユビキチンリガーゼは,リガンドタンパク質をユビキチン化し,Notch受容体の細胞外ドメインをリガンド細胞側へトランスエンドサイトーシスさせる。引き続き,ADAM17によりNotch受容体S2切断が,γ-secretase複合体によりS3切断が起こり,細胞膜から乖離されたNICD(Notch intracellular domain)が核へ移行する。NICDは核内でDNA結合タンパク質CSL(CBF1/Su(H)/Lag-1)およびMAM(Mastermind)と転写活性化複合体を形成し,HESファミリー遺伝子などの下流標的遺伝子の転写を促進する。種々の組織では,異なったシグナル調節機構や下流標的遺伝子発現が行われることで,異なる生理機能が発揮されると考えられている。Notchシグナルの異常は,白血病などのがんやAlagille,CADASILなどの遺伝病の原因となる。