文献詳細
文献概要
増大特集 細胞シグナル操作法 Ⅰ.分子からみたシグナル操作法 4.その他
ヘッジホッグシグナル
著者: 松丸大輔1 山田源1
所属機関: 1和歌山県立医科大学先端医学研究所遺伝子制御学研究部
ページ範囲:P.442 - P.443
文献購入ページに移動哺乳類では3種類のHHリガンド(SHH;Sonic hedgehog, IHH;Indian hedgehog, DHH;Desert hedgehog)が知られており,ショウジョウバエのセグメントポラリティ因子hhのホモログとして同定された。これらのリガンドは様々な翻訳後修飾を受け,N末端側(HH-N)が膜タンパク質DISP(Dispatched),分泌糖タンパク質SCUBE2(Signal peptide, CUB domain, EGF-like 2)の作用により産生細胞から放出される。HHリガンドの標的細胞への到達には,可溶なHHリガンド複合体の形成,リポタンパク質粒子や分泌小胞の形成,特殊な糸状仮足(cytoneme)を経由する方式など,幾つかのモデルが提唱されている。HHリガンドが標的細胞に到達すると,7回膜貫通タンパク質SMO(Smoothened)や12回膜貫通タンパク質PTC(Patched;PTC1とPTC2が存在する)などから成る受容体複合体によりシグナルが伝達される。HHリガンドの非存在下では,PTCはSMOの活性化を阻害し,HHリガンド存在下ではその阻害が解除される。近年,HHリガンドはPTCに加え,GAS(Growth arrest specific),CDO(Cell adhesion molecule-related/downregulated by oncogenes),BOC(Brother of CDO)といった共役受容体タンパク質とも相互作用することが知られてきている。SMOの下流ではHHシグナルはGLI(GLI-Kruppel family member)転写因子によって伝達される。GLI2,GLI3タンパク質は,N末端側に転写リプレッサードメイン,C末端側に転写アクティベータードメインを持ち,全長のタンパク質の状態で転写活性化因子(GLI2/3A)として,種々のプロセッシングを受けて転写抑制因子(GLI2/3R)として機能し得る。GLI3タンパク質の多くが効率良くプロセッシングを受けてリプレッサーフォームをとるのに対し,GLI2では,その一部のみがプロセッシングを受け,かつ全長のGLI2タンパク質は速やかに分解されるため,ごく一部がリプレッサーフォームとして存在する。GLI2,GLI3分子間のプロテアソーム上での分解の違いは,C末端側に存在する200残基程度のアミノ酸配列の差異によるものである。これに対し,GLI1はN末端側に転写リプレッサードメインを持たない。また,
以上がHHシグナルの基本的伝達様式(図)であるが,近年,PTC1の細胞内ドメインが独立に機能し得る点や,SMOがGタンパク質共役受容体(GPCR;G protein-coupled receptor)としてCa2+などのセカンドメッセンジャーを介して機能し得る点など,非古典的なHHシグナル経路の存在も注目されつつある。
参考文献
掲載誌情報