icon fsr

文献詳細

雑誌文献

生体の科学66巻5号

2015年10月発行

文献概要

増大特集 細胞シグナル操作法 Ⅰ.分子からみたシグナル操作法 4.その他

γ-セクレターゼ

著者: 富田泰輔1 岩坪威2

所属機関: 1東京大学大学院薬学系研究科機能病態学教室 2東京大学大学院医学系研究科神経病理学分野

ページ範囲:P.462 - P.463

文献購入ページに移動
 γ-セクレターゼは,アルツハイマー病の原因物質アミロイドβタンパク質(amyloid-β protein;Aβ)を産生するプロテアーゼである。プレセニリン(presenilin;PS)を酵素サブユニットとし,ニカストリン,Aph-1,Pen-2を構成因子とする膜タンパク質複合体がその分子実体である(図)。脂質二重膜内に存在する膜貫通領域を基質とし,まず細胞膜-細胞質境界部分においてエンドペプチダーゼ様活性によって切断した後,残された膜貫通領域をカルボキシ末端側から3ないし4アミノ酸ごとにカルボキシペプチダーゼ様活性によって切断し,最終的に基質のアミノ末端側が細胞外へと放出される1)
 PSをコードするPSEN遺伝子上に家族性アルツハイマー病患者に連鎖する遺伝子変異が多数見いだされており,カルボキシペプチダーゼ様活性の低下により,カルボキシ末端長が長く凝集性の高いAβ42の産生比率を上昇させる。また,γ-セクレターゼ活性を完全に喪失した場合には,発生・分化にかかわるNotchシグナルの抑制が認められる。これは転写因子として機能するNotchの細胞質内領域の産生にエンドペプチダーゼ様活性が必要とされるためである。更にNotch以外にも多くの基質が知られている。そのためアルツハイマー病治療薬開発においては,カルボキシペプチダーゼ様活性を亢進させることで凝集性の低いAβ産生へとシフトさせることが求められている。

参考文献

. 288:14673-14680, 2013
. 156:195-201, 2014
. 111:10544-10549, 2014
. 31:787-798, 2012
. 422:438-441, 2003

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら