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文献詳細

雑誌文献

生体の科学66巻5号

2015年10月発行

文献概要

増大特集 細胞シグナル操作法 Ⅱ.機能からみたシグナル操作法 2.タンパク質の一生

タンパク質合成

著者: 服部成介1

所属機関: 1北里大学薬学部生化学教室

ページ範囲:P.480 - P.481

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 タンパク質合成は,ヘムやアミノ酸欠乏条件,熱ショックや小胞体ストレス,ウイルス感染などの様々な細胞内ストレスに応答して抑制される。その制御機構として,リボソームに開始メチオニル-tRNAをGTP依存性に結合する因子eukaryotic initiation factor 2α(eIF2α)のリン酸化が知られている1)。eIF2αは,様々なストレス刺激により51番目のセリン残基がリン酸化され,リン酸化されたeIF2αはGDPに強く結合することで不活性化状態となる。タンパク質合成にはまた,細胞外の富栄養条件や成長因子刺激により促進される。翻訳制御にかかわるリボソーム40Sサブユニットの構成因子であるS6,mRNAの5'端Cap構造に結合し,翻訳開始に必須であるeIF4Bの抑制性結合因子4EBP1(eIF4B binding protein 1)のリン酸化による活性促進的な制御が知られている2-5)
 S6のリン酸化は,5'端にピリミジンに富む配列を有するmRNAの翻訳を促進するが,これらのmRNAから翻訳される因子には,リボソーム構成因子やタンパク質合成伸長反応に関与するEF-1,EF-2などの伸長因子などが存在するため,リボソーム生合成とタンパク質合成が促進される。eIF4Bは,4EBP1と結合していると不活性状態であるが,4EBP1がリン酸化されるとeIF4Eから解離し,タンパク質合成が開始する(図)。細菌のタンパク質合成阻害薬は様々な抗生物質として,医薬品として用いられているが,真核細胞を対象とした阻害薬は研究室レベルでは実験に用いられるが,臨床では使用されない。

参考文献

1)Devli TM:デブリン生化学─臨床の理解のために.上代淑人,澁谷正史,井原康夫 監訳,pp313-315.丸善出版,東京,2012
. 269:5338-5349, 2002
. 3:452-455, 2004
. 27:6-11, 2010
.55:11-17, 2010

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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