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文献詳細

雑誌文献

生体の科学66巻5号

2015年10月発行

増大特集 細胞シグナル操作法

Ⅱ.機能からみたシグナル操作法 2.タンパク質の一生

小胞体ストレス応答

著者: 金本聡自1 今泉和則1

所属機関: 1広島大学大学院医歯薬保健学研究院分子細胞情報学

ページ範囲:P.492 - P.493

文献概要

 小胞体ストレスとは,細胞が種々の刺激を受けることで小胞体内に折りたたみ異常タンパク質が蓄積していく現象のことである。小胞体ストレスは,アルツハイマー病を初めとした神経変性疾患や糖尿病,慢性炎症疾患,がんなど,多岐にわたる疾病の一因となることが報告され,小胞体ストレスの制御が治療ターゲットとして注目されている。細胞が小胞体ストレス状態を感知してそれに対処するために発信するシグナル応答は,小胞体ストレス応答あるいはunfolded protein response(UPR)と呼ばれ,積極的に小胞体内から異常タンパク質を排除しようとする。UPRの発動によってもストレス状態を回避できない場合,細胞は最終的にアポトーシスを引き起こし,死に至る。
 UPRを発動するのは小胞体ストレスセンサーと呼ばれるIRE1,PERK,ATF6という3種類の小胞体膜貫通型タンパク質である。これら三つのセンサーは小胞体内腔の状態を常にモニターしており,小胞体ストレス状態になると活性化し,続いてそれぞれの下流分子を活性化する。IRE1,PERK,ATF6はユビキタスに発現しているが,組織特異的に発現する小胞体ストレスセンサーとしてOASISファミリーがある。近年,小胞体ストレス応答は単に異常タンパク質の排除システムとして機能するだけでなく,細胞や組織の分化・成熟にも寄与していることが明らかになってきた。

参考文献

. 307:935-939, 2005
. 48:899-907, 1987
. 10:98-102, 2004
. 23:169-179, 2004
. 149:507-518, 2011

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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