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文献概要
増大特集 細胞シグナル操作法 Ⅱ.機能からみたシグナル操作法 2.タンパク質の一生
カルパイン
著者: 反町洋之1
所属機関: 1公益財団法人東京都医学総合研究所生体分子先端研究分野
ページ範囲:P.500 - P.501
文献購入ページに移動 カルパイン(calpain,CAPN)はCa2+によって活性化されるシステインプロテアーゼの総称で,ほとんどの真核生物と一部の原核生物に存在し,スーパーファミリーを形成する。哺乳類では十数種の遺伝子にコードされ(図),各遺伝子の欠損などにより,胎生致死を初め様々な病態を引き起こすため,生体制御に必須な機能を果たすことが明らかとなっている。更に,病態解析が進んでいる筋ジストロフィーなどでは,創薬の標的ともなっている。
カルパインはプロテアーゼでありながら,基質蛋白質をバラバラに分解するのではなく,ごく一部のペプチド結合を切断する“限定分解”により,基質機能・構造を変換するモジュレータ(調節・変換)プロテアーゼである。例えば,阻害ドメインを同一分子内に持つために不活性状態で維持されている酵素(プロテインキナーゼCなど)について,その部分を切断することで活性化する。また,不安定化モチーフの切除により安定化し(またはその逆),基質蛋白質の寿命を調節する。あるいは,細胞骨格系蛋白質を限定切断することで,細胞骨格構造を変化させ,形態や移動能を調節する。その機能は補助的な場合も多いが,その分,非常に広範な生命現象に関与するため,カルパイン不全による病態は,前述以外にも,ストレス性胃出血,2型糖尿病,筋肥大,好塩基球性食道炎,硝子体網膜症など多岐にわたる。
カルパインはCa2+により活性化されるが,ほかにも足場蛋白質や細胞内膜系,リン脂質,局在変化などにより複雑かつ厳密に制御されている。ある生命現象に,カルパイン分子種のいずれかが関与すると考えられる場合は,生化学的手法であたりをつけてから,各カルパインのノックアウトマウスあるいはその初代培養細胞を用いて確認するのがよいと思われる。
カルパインはプロテアーゼでありながら,基質蛋白質をバラバラに分解するのではなく,ごく一部のペプチド結合を切断する“限定分解”により,基質機能・構造を変換するモジュレータ(調節・変換)プロテアーゼである。例えば,阻害ドメインを同一分子内に持つために不活性状態で維持されている酵素(プロテインキナーゼCなど)について,その部分を切断することで活性化する。また,不安定化モチーフの切除により安定化し(またはその逆),基質蛋白質の寿命を調節する。あるいは,細胞骨格系蛋白質を限定切断することで,細胞骨格構造を変化させ,形態や移動能を調節する。その機能は補助的な場合も多いが,その分,非常に広範な生命現象に関与するため,カルパイン不全による病態は,前述以外にも,ストレス性胃出血,2型糖尿病,筋肥大,好塩基球性食道炎,硝子体網膜症など多岐にわたる。
カルパインはCa2+により活性化されるが,ほかにも足場蛋白質や細胞内膜系,リン脂質,局在変化などにより複雑かつ厳密に制御されている。ある生命現象に,カルパイン分子種のいずれかが関与すると考えられる場合は,生化学的手法であたりをつけてから,各カルパインのノックアウトマウスあるいはその初代培養細胞を用いて確認するのがよいと思われる。
参考文献
. 267:24585-24590, 1992
. 100:183-190, 1986
. 120:2672-2683, 2010
. 268:7422-7426, 1993
. 273:17073-17078, 1998
掲載誌情報