増大特集 細胞シグナル操作法
Ⅱ.機能からみたシグナル操作法 3.細胞の動態
細胞骨格(アクチン系)
著者:
山城佐和子1
渡邊直樹12
所属機関:
1京都大学大学院生命科学研究科分子動態生理学
2京都大学大学院医学研究科神経・細胞薬理学
ページ範囲:P.504 - P.505
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アクチン細胞骨格は,球状の単量体アクチン(Gアクチン)が重合したアクチン線維(Fアクチン)によって構成されており,細胞の形態制御や分裂など,様々な細胞現象で中心的な役割を果たす。細胞内ではアクチン細胞骨格は速やかに崩壊・再編成されるダイナミックな構造体であり,アクチンの再編成は,細胞外刺激に応答するシグナル伝達経路の主要なアウトプットの一つである。例えば,Gタンパク質共役型受容体,増殖因子受容体,セマフォリン受容体プレキシンが刺激されると,Rhoファミリー低分子量Gタンパク質などを介して下流でアクチン再編成が引き起こされる。
更に,アクチン細胞骨格そのものが,シグナル伝達を仲介する仕組みがある。Gアクチン量の減少は,転写調節因子MRTF(myocardin-related transcription factor)を介して核内に伝わり,転写因子SRF(serum response factor)を活性化する1)。また,アクチン線維がメカノセンサーとして働く可能性がin vitroでの解析を中心に解明されつつある2)。すなわち,Fアクチンに“力”がかかることがFアクチンの立体構造変化をもたらし,調節分子の親和性に影響を与えると想定されている。本稿では,アクチンまたは調節分子の動態を操作する方法(作用薬物,分子操作)と,捉える方法(活性評価法,イメージング)について概説する。