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文献詳細

雑誌文献

生体の科学66巻5号

2015年10月発行

文献概要

増大特集 細胞シグナル操作法 Ⅱ.機能からみたシグナル操作法 3.細胞の動態

細胞接着(カドヘリン)

著者: 永渕昭良1

所属機関: 1奈良県立医科大学医学部生物学教室

ページ範囲:P.510 - P.511

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 カドヘリン(クラシックカドヘリン)は細胞間接着において中心的な役割を果たす1回膜貫通型膜タンパク質である。哺乳類では17種類前後遺伝子が存在してファミリーを形成し,更に細胞外領域のコンセンサス配列の特徴に従ってタイプⅠ(通常5種類),タイプⅡ(通常12種類)の二つのサブグループに分かれる。カルシウム存在下においてのみ,細胞間の強固でありながら動的な接着に寄与する1)。多くのカドヘリンは同種結合性を示し,動物の形態形成において重要な役割を果たすと考えられている。細胞質領域ではβカテニンとαカテニンを介してアクチン系細胞骨格と相互作用している。また,p120との結合がカドヘリンのリサイクリングや細胞内輸送を制御している。これらの細胞質因子との相互作用は,カドヘリンが生理的機能を発揮するために必須である。
 カドヘリンの高次構造は,細胞外領域について結晶解析が進んでいる。カドヘリンの細胞外領域には五つのカドヘリンリピートが存在し,それぞれのリピート間にそれぞれ三つ,合計で12個のカルシウムイオンが結合することにより,五つのリピートが直列に並んだ少し曲がった構造として安定する。各リピートは特徴的な7本のβストランドから成るβバレル構造をとる。1番目のリピートの最初のβストランドを隣の細胞の同じストランドと交換することにより(ストランドスワップ),安定したトランスの結合状態をとる。1番目のリピートの別の部位が同じ細胞にある隣のカドヘリン分子の2番目のリピートと相互作用することにより,緩やかなシスの分子間結合が生じる。このトランスとシスの結合は互いに直交した形で生じ,この細胞外領域をリポソーム表面に結合させると,そのリポソーム間にカドヘリンを含む接着装置に特有の鋸歯状の周期的な構造が形成される2)。細胞質領域はカドヘリン結合因子であるβカテニンと結合して安定な構造をとる。βカテニンを介してαカテニンと複合体を形成し,アクチン系細胞骨格と相互作用する。膜近傍でp120と結合し,カドヘリンの細胞内輸送やリサイクリングが調節される(図)。

参考文献

. 8:d306-356, 2003
. 19:244-256, 2011
. 329:341-343, 1987
. 4:37-47, 1993
. 127:235-245, 1994

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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