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文献詳細

雑誌文献

生体の科学66巻5号

2015年10月発行

文献概要

増大特集 細胞シグナル操作法 Ⅱ.機能からみたシグナル操作法 3.細胞の動態

チェックポイント

著者: 佐谷秀行1 國仲慎治1

所属機関: 1慶應義塾大学先端医科学研究所遺伝子制御研究部門

ページ範囲:P.516 - P.517

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 細胞周期はDNA合成のS期と細胞(核・細胞質)分裂のM期を中心に,両者を分かつ二つのGapであるG1,G2の四つのフェーズを基本としてG1→S→G2→M→G1というように秩序だって進行する(図)。細胞周期の正常な遂行をつかさどる機構であるチェックポイントの概念は1970年代,Leland Hartwell(2001年ノーベル生理学・医学賞受賞)が出芽酵母を用いた遺伝学的解析から着想して提唱し,現在に至るまで広く受け入れられている。その提要は,細胞周期では,あるフェーズが正常に終了しないと次のフェーズに進めないというものである1)。実際,幾つかのフェーズ移行点で細胞周期進行はチェックを受けており,そこで認められた異常は細胞周期の停止の後に修復されるか,または異常が深刻な場合は細胞死の誘導による細胞自体の除去が行われる。
 チェックポイントには大きく分けてG1/S期チェックポイント,G2/M期チェックポイント,M期の中-後期移行に関与する紡錘体チェックポイントの三つが存在する(図)2)。G1/S期,G2/M期チェックポイントは,細胞周期進行の主エンジンと言えるサイクリン依存キナーゼ(cyclin-dependent kinase;Cdk)の活性化を阻害する。一方,M期中-後期移行に働く紡錘体チェックポイントは,E3ユビキチンリガーゼ複合体の後期促進複合体(anaphase promoting complex/cyclosome;APC/C)の活性化を抑制する。
 細胞周期とは親細胞の持つ遺伝情報を娘細胞に正確に複製分配する連続した過程であり,チェックポイント機能不全は癌に特徴的な異常な情報伝達(染色体不安定性)の大きな原因となる。これまでの研究によりチェックポイントをつかさどる多くの遺伝子が同定されており,この複雑な機構の理解は長足の進歩を遂げているが,チェックポイントを標的とした新規癌治療薬の開発など,課題もまだ残っている。

参考文献

. 38:164-198, 1974
2)Morgan DO:The Cell Cycle -Principles of Control. 中山敬一,中山啓子監訳:細胞周期─細胞増殖の制御メカニズム.メディカル・サイエンス・インターナショナル,東京,2008
. 1:82-87, 1999
. 23:6548-6558, 2004
. 161:281-294, 2003

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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