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文献詳細

雑誌文献

生体の科学66巻5号

2015年10月発行

増大特集 細胞シグナル操作法

Ⅱ.機能からみたシグナル操作法 3.細胞の動態

血管新生

著者: 福原茂朋

所属機関: 1国立循環器病研究センター研究所細胞生物学部

ページ範囲:P.520 - P.521

文献概要

 血管新生とは,既存の血管から血管枝が発芽・伸長し,新たな血管網を構築するプロセスである(図)1)。血管新生は,胎生期における血管発生過程で活発に誘導され,全身を張り巡らす血管網の構築に寄与する。成体では通常,血管新生は子宮内膜などの限られた部位でしかみられないが,組織傷害や虚血性疾患などにより組織が虚血状態に陥ると,虚血組織から血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor;VEGF)が産生され,血管新生が誘導される。成熟した血管では,内皮細胞が血管内腔でシート構造を形成し,その周囲を壁細胞が取り巻くことで安定な血管構造が構築される。血管新生が誘導されると血管壁から壁細胞が脱落し,内皮細胞同士の接着が減弱することで血管構造の不安定化が引き起こされる。更に,VEGFが内皮細胞の遊走能,増殖能を亢進することで新たな血管網が構築される。
 癌や糖尿病網膜症などある種の疾患では,血管新生により脆弱で未熟な血管が形成され,これら疾患の病態を悪化させる(病的血管新生という)。このため,病的血管新生をターゲットにした,これら疾患の治療薬の開発が成されている。一方,虚血性疾患の治療を目的に,機能的な血管を再生する血管再生療法の開発研究も精力的に行われている。したがって,臨床的にも血管新生研究の意義は大きい。

参考文献

. 386:671-674, 1997
. 443:83-101, 2008
. 161:1163-1177, 2003
. 27:563-584, 2011
. 97:11403-11408, 2000
. 32:109-122, 2015

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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