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文献詳細

雑誌文献

生体の科学66巻6号

2015年12月発行

文献概要

特集 グリア研究の最先端 C.ヒト疾患グリア病

精神疾患のミクログリア仮説解明のための橋渡し研究

著者: 加藤隆弘12 扇谷昌宏1 神庭重信1

所属機関: 1九州大学大学院医学研究院精神病態医学分野 2九州大学先端融合医療レドックスナビ研究拠点

ページ範囲:P.584 - P.588

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 近年の死後脳研究やPET(positron emission tomography)を用いた生体脳研究により,統合失調症,自閉症,大うつ病など様々な精神疾患患者において,脳内免疫細胞ミクログリアの過剰活性化が次々と報告されており1-8),ミクログリア活性化抑制作用を有する抗生物質ミノサイクリンに抗精神病作用や抗うつ作用が報告されている9-13)。他方,筆者らは,ヒトでの研究ではないが,齧歯類由来ミクログリア細胞を用いたin vitro実験により,精神科臨床で欠かすことのできない様々な抗精神病薬や抗うつ薬がミクログリア細胞の過剰活性化を直接的に抑制することを見いだしてきた14-17)。従来,抗精神病薬や抗うつ薬は,神経細胞およびシナプス間のネットワークを含む神経回路にもっぱら作用すると信じられており,グリア細胞への直接的な影響はほとんど鑑みられない状況であった。筆者らは,こうした薬剤が脳内で直接的にミクログリア過剰活性化を抑制することを通じて脳保護的に作用しているのではないかという仮説を立てており,ミクログリア過剰活性化を介した精神疾患の病態治療仮説を提唱してきた18-20)(図1)。本稿では,精神疾患におけるミクログリア仮説解明のために推進しているヒトを対象とした橋渡し研究の一端を紹介する。

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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