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特集 記憶ふたたび
文献概要
William Quinnが1974年に,ショウジョウバエ(以下,ハエ)でも古典的連合学習が成立することを示してから40年が経つが1),ハエの記憶研究の流行も少しずつ変化してきた。当初は,遺伝子変異体を用いたスクリーニング実験から記憶関連分子を同定するフォワードジェネティクスが主流であった。これらの研究により,転写因子CREBを初めとするcAMP経路がハエで見つかり,哺乳類でも同様であることが明らかになってきた。近年では,フォワードジェネティクスを用いた記憶関連分子検索よりも,既知の分子群が記憶形成や保持の過程においてどのように機能するか,RNAiなどに代表されるリバースジェネティクス的手法を用いて解析することが主流になっている。更には,分子レベルのメカニズムだけでなく,神経回路網や神経の可塑性といった細胞レベルのメカニズムに注目する研究が非常に増えている。
哺乳類とハエを比較すると,脳の構造が全く異なるため,一見,哺乳類と共通する知見を得ることは難しいように見える。しかし,ハエだからこそ見えてきた新しい学習記憶機構が複数あり,ハエを用いるメリットは確実に存在する。本稿ではハエを用いた記憶研究だからこそ見えてきた新しい知見について紹介していく。
哺乳類とハエを比較すると,脳の構造が全く異なるため,一見,哺乳類と共通する知見を得ることは難しいように見える。しかし,ハエだからこそ見えてきた新しい学習記憶機構が複数あり,ハエを用いるメリットは確実に存在する。本稿ではハエを用いた記憶研究だからこそ見えてきた新しい知見について紹介していく。
参考文献
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掲載誌情報