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特集 記憶ふたたび
4.線虫の微小神経回路による学習と記憶
著者: 國友博文1 飯野雄一1
所属機関: 1東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻
ページ範囲:P.17 - P.21
文献購入ページに移動 学習・記憶のしくみは,神経系を持つあらゆる動物が備え持つ生存のための適応戦略である。最も基本的な連合学習のしくみであるパブロフの古典的条件付けでは,動物が条件刺激と無条件刺激との関係を学習することによってその後の行動が変化する。神経系のどこで変化が起こっているかは,単純な神経系を用いることにより明確にできると期待される。本稿で紹介する線虫C. elegans (以下単に線虫と呼ぶ)は,神経系の情報処理機構を研究するためのシンプルなモデル系としてよく知られている。この生物では発生の細胞系譜が完全にわかっており,雌雄同体成虫の体細胞数は959個である。このうち,神経細胞は302個であり,ASE,AWCなど,英字3〜5文字から成る名前がすべての神経についている。更に,これらの間の化学シナプス・電気シナプスの結合が完全に解明されているという,他の動物にはないユニークな研究基盤を与えてくれる。この単純な生き物にも連合学習や非連合学習がみられ,学習によって,この回路のどこがどう変化して行動が変化するか,そして,いかなる分子機構がそこにかかわっているかがこの生物を用いた研究の最大の焦点になっている。
参考文献
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