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文献詳細

雑誌文献

生体の科学67巻1号

2016年02月発行

文献概要

特集 記憶ふたたび

5.記憶痕跡とメモリーアロケーション

著者: 佐野良威1 大川宜昭1 鈴木章円1 井ノ口馨1

所属機関: 1富山大学医学薬学研究部(医学)生化学講座

ページ範囲:P.22 - P.26

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 記憶痕跡とは,20世紀初頭にドイツの生物学者Richard Semonにより唱えられた言葉であり,学習時に活動した特定の神経細胞集団(セルアセンブリ)という形で脳内に残った物理的な痕跡のことを指す。1949年にカナダの心理学者Donald Hebbが提唱したセルアセンブリ仮説によると,脳内には記憶時の刺激に応答して活動する神経細胞群が存在するが,それらの活動した神経細胞群は強いシナプス結合で結ばれ,セルアセンブリを形成し,記憶はその中に符号化して蓄えられると想定されている1)。つまり記憶は,学習時に繰り返し活動した神経細胞のセットという形で脳の中に保存され,何らかのきっかけでこのセルアセンブリに属する一部の神経細胞が活動すると,強いシナプス結合で結ばれたセルアセンブリ全体が活動し,その結果として記憶が想起されると考えられている(図1)。特定のセルアセンブリから形成される神経細胞ネットワークが“記憶痕跡”の物理的な実体である。

参考文献

1)Hebb DO:The Organization of Behavior. A Neuropsychological Theory. John Wiley&Sons, New York, 1949
. 2:1120-1124, 1999
. 317:1230-1233, 2007
. 484:381-385, 2012
. 15:157-169, 2014
. 316:457-460, 2007
. 12:1438-1443, 2009
. 323:1492-1496, 2009
. 17:65-72, 2014
. 24:2833-2837, 2014
. 83:722-735, 2014
. 11:261-269, 2015
. 522:335-339, 2015
. 348:1007-1013, 2015

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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