文献詳細
特集 記憶ふたたび
文献概要
記憶メカニズムについて従来の研究方法は,脳機能イメージングによって活動変化を起こす領域を見つけ出し,また,動物で特定領域の傷害や神経回路の機能欠損によって責任領域・神経回路を決めることが主流であった。更に,同定された領域・回路内にあるニューロンの活動,シナプス伝達効率,スパイン形態などの変化が動物の行動変化と相関関係があることをもって,これらの変化が記憶形成の素過程であると結論付けてきた。しかし,以下の二つの重要な点について検証を行わずにきた記憶研究者は,記憶メカニズムの本質に迫るためには従来の方法では不十分であることを痛切に感じていた。
①散らばって存在している記憶にかかわるニューロンを直接操作して,記憶を操作できるか?
②記憶の素過程と考えられる現象が,記憶にかかわるニューロンで実際に生じているのか?
本稿では,Optogeneticsと神経活動に依存したニューロン標識の手法を組み合わせて前述の問題をエレガントに解決し,これまでにないレベルで記憶メカニズムについて新しい知見と研究手法を提供した,RIKEN-MIT神経回路遺伝学センター利根川進研究室において行われた研究を中心に紹介する。これらの研究はNature Neurosci誌が世界の著名な神経科学者達に対して行ったアンケートで,Optogenetics導入後の10年間でその技術を最も効果的に用いた研究として多数の研究者から選ばれている1)。
①散らばって存在している記憶にかかわるニューロンを直接操作して,記憶を操作できるか?
②記憶の素過程と考えられる現象が,記憶にかかわるニューロンで実際に生じているのか?
本稿では,Optogeneticsと神経活動に依存したニューロン標識の手法を組み合わせて前述の問題をエレガントに解決し,これまでにないレベルで記憶メカニズムについて新しい知見と研究手法を提供した,RIKEN-MIT神経回路遺伝学センター利根川進研究室において行われた研究を中心に紹介する。これらの研究はNature Neurosci誌が世界の著名な神経科学者達に対して行ったアンケートで,Optogenetics導入後の10年間でその技術を最も効果的に用いた研究として多数の研究者から選ばれている1)。
参考文献
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掲載誌情報