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文献詳細

雑誌文献

生体の科学67巻1号

2016年02月発行

特集 記憶ふたたび

11.痛みから捉える情動記憶の神経回路基盤

著者: 渡部文子1

所属機関: 1東京慈恵会医科大学総合医科学研究センター神経科学研究部

ページ範囲:P.51 - P.55

文献概要

 ヒトや動物は,敵や危険なもの,痛み,脅威(threat)などを経験した場所や関連するシグナルに対しては,考える間もなく恐怖が生じ,逃避行動へと駆り立てられる。一方,ヒトでも動物でも,自己の欲求を満たすようなシグナルには正の情動が生じ,それに対して接近行動が生じる。このように,情動には外界から入ってきたシグナルの“価値”に応じて,自らの行動を強力に駆動する力がある。われわれはこの力を利用して,普段健康な状態では内的状態や外的環境をダイナミックに統合し,その場にふさわしい行動を柔軟に選択しているのであろう。
 チャールズ・ダーウィンは『人間と動物における情動の表現』の中で,情動を「非常事態にさらされた生物が,適切に対処し,生存の可能性を増加させるためのもの」と定義した。このように考えると,情動は,個体の生存確率を上げる進化的産物であるとも言える。確かに「この場所では以前危険な目にあったから,避けたほうがいいかなあ」などと考えている間に敵に見つかってしまう個体より,「なんだかわからないけどその場所に行こうとすると手や足がすくんで動けない」といった個体のほうが,サバイバルチャンスは高いであろうことは想像に難くない。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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