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文献詳細

雑誌文献

生体の科学67巻2号

2016年04月発行

文献概要

特集 細胞の社会学─細胞間で繰り広げられる協調と競争 Ⅰ.細胞競合の分子細胞遺伝学

マウス胚線維芽細胞NIH3T3を用いた細胞競合モデル系の樹立

著者: 竹之下憂祐1 加村啓一郎2 佐々木洋2

所属機関: 1大阪大学大学院生命機能研究科 2大阪大学大学院生命機能研究科初期胚発生研究室

ページ範囲:P.111 - P.115

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 われわれの体は細胞の集合として作られる。個々の細胞の挙動にはばらつきがあるが,隣接する細胞同士は互いにコミュニケーションすることで,その挙動を調和させ,体を正確に作り,胚や組織全体としての恒常性を維持していると考えられる。そのような細胞間のコミュニケーションの機構の一つが細胞競合である。細胞競合では,隣接する細胞の適応度の違いにより,相対的に適応度が低い細胞を敗者として排除する1,2)。細胞競合は最初にショウジョウバエの成虫原基で発見され,原がん遺伝子である転写因子のMycやリボソーム遺伝子の発現量の違いが細胞競合につながること,Hippoシグナル経路やWntシグナル経路が関与していることなど,多くの知見が得られてきた。一方,最近マウス胚のエピブラストにおいて,Mycによる細胞競合が起こることが示された3,4)が,ヒトやマウスなどの哺乳類における細胞競合についての知見は限られており,哺乳類における細胞競合現象の普遍性や,その分子機構についての研究を進めていく必要がある。われわれは,哺乳類における細胞競合機構を明らかにするために,マウス胚由来の線維芽細胞株NIH3T3を用いて,簡便な細胞競合のモデル系を作製した5)。本稿では,われわれが樹立した細胞競合のモデル系と,それを用いて明らかになった転写因子TeadとMycによる細胞競合機構について解説する。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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