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特集 細胞の社会学─細胞間で繰り広げられる協調と競争 Ⅱ.上皮細胞の協調を制御する分子メカニズム
膜変形タンパク質による細胞膜の張力を介した細胞運動の制御
著者: 辻田和也1
所属機関: 1神戸大学バイオシグナル研究センター生体膜機能研究分野
ページ範囲:P.122 - P.126
文献購入ページに移動 細胞は,細胞膜を介して外界からの様々なシグナルに応答し,それをいわゆる生化学反応に変換することで細胞機能を制御しており,細胞膜がシグナル伝達の場として中心的な役割を果たしていることは周知の事実である。近年,細胞膜自身の力学的な性質に注目が集まっている1,2)。細胞は,その機能に応じて細胞膜を力学的に変形しながら自身の形態を変える。例えば,細胞が運動や分裂をするとき,細胞膜の伸展や収縮が起こる。このような細胞膜の変形を伴う機能に大きな影響を与える因子は膜の張力である。近年の研究により,細胞膜の張力が,細胞運動,分裂,組織の形成など基本的な生命現象を制御していることが明らかになりつつある1,2)。このことは,細胞膜の張力そのものがシグナルとして働き,これらの細胞膜の形状変化を伴う細胞機能を制御していることを示唆している。しかし,細胞膜張力の感知機構およびそれを介したシグナル伝達機構についてはほとんど不明である。細胞はどのように細胞膜の張力を認識するのであろうか? 細胞膜の張力という物理的なシグナルは,どのように生化学反応に変換されるのであろうか? 本稿では,われわれが明らかにした“細胞膜の張力センサー”タンパク質を中心として3),細胞運動を制御する細胞膜の張力を介したシグナル伝達機構について紹介する。
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