icon fsr

文献詳細

雑誌文献

生体の科学67巻2号

2016年04月発行

文献概要

特集 細胞の社会学─細胞間で繰り広げられる協調と競争 Ⅲ.がんにおける細胞の協調と競争

がん細胞社会のなかの多様性・多層性

著者: 西本裕希1 髙橋智聡1

所属機関: 1金沢大学がん進展制御研究所

ページ範囲:P.151 - P.154

文献購入ページに移動
 正常上皮細胞の真ん中にがん細胞が突然出現する細胞競合研究の基本的モデルは,多段階発がんの概念をある意味で割愛しており,ヒトに生じるがんの病態とその歴史を十分反映しないかもしれない。また,細胞社会の多様性という観点からすると,細胞競合現象は,WinnerがLoserを駆逐する,つまり,多様性を小さくする方向に働く1)。正常組織のホメオスターシス維持には,細胞競合が貢献するであろう。しかし,様々な観察は,がん細胞社会の多様性ががん進展の経過中に大きくなることを示唆している2)。このことの意義を理解するには,様々な機序によって生じる腫瘍内不均一性と,腫瘍を構成するクローン群間の協調・競合関係への洞察が重要と思われる。
 近年のDNAシーケンス・解析技術の目覚ましい発達は,腫瘍を構成する細胞群のゲノム・エピゲノム不均一性を,例えば治療経過に沿って繰り返された針生検によって,腫瘍内の複数か所で,かつ経時的に観察することを可能にした3)。そこで見えてきたものは,驚くべきダイナミズムで進行するクローン進化とクローン間の協調関係であった2)。その結果もたらされるがん細胞社会の多様性が,原発巣の維持や再発・転移に重要な貢献をすることも判明しつつある。

参考文献

. 158:15-23, 2015
. 27:15-26, 2015
. 15:452, 2014
. 3:730-737, 1997
. 100:3983-3988, 2003
. 23:357-364, 2013
. 24:1731-1745, 2010
. 508:113-117, 2014
. 19:244-256, 2011
. 20:6429-6438, 2014
. 518:422-426, 2015
. 141:583-594, 2010
. 3:123-134, 2010
. 15:62-69, 2014
. 33:1657-1669, 2015
. 2015 Dec 1[epub ahead of print]
. 343:189-193, 2014
. 6:6377, 2015
. In press
. 16:39-50, 2015

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?