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文献詳細

雑誌文献

生体の科学67巻2号

2016年04月発行

文献概要

特集 細胞の社会学─細胞間で繰り広げられる協調と競争 Ⅳ.細胞の競争と協調の数理モデル

数理の立場から細胞競合を眺める─自己駆動粒子を用いた細胞競合のモデルとシミュレーション

著者: 西川星也1 高松敦子2

所属機関: 1早稲田大学先進理工学研究科博士後期課程1年 2早稲田大学理工学術院

ページ範囲:P.155 - P.158

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 細胞競合は主に上皮組織でみられる現象で,組織の一部に変異細胞が誘導されると,正常細胞との境界で競合が起こり,最終的に変異細胞が組織から排除される(図1A-図1C)。変異細胞が正常細胞に取り囲まれると,細胞死や排出が引き起こされることが観察されている。排除の結果,空いた空間には正常細胞が増殖し,それによって正常な組織サイズを維持すると言われている。このことから細胞競合現象は,正常な発生,組織の維持などに重要な役割を果たすと考えられている。
 細胞競合は最初,ショウジョウバエ翅成虫原基にMinute変異細胞クローンを誘導した系で発見された1)Minuteはリボソームタンパク質関連の遺伝子であり,そのヘテロ変異個体は単独でも生存可能で,正常サイズの翅を形成する(図1B)。しかし,成長の速さが正常個体に比較して遅いことから,細胞競合の結果,どちらの細胞群が生き残るかという勝敗の運命は,成長速度の相対値によって決まると考えられた。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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