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文献詳細

雑誌文献

生体の科学67巻2号

2016年04月発行

文献概要

仮説と戦略

線虫を用いたがん診断

著者: 広津崇亮1

所属機関: 1九州大学大学院理学研究院生物科学部門

ページ範囲:P.178 - P.183

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 がんはわれわれ人類にとって最大の敵の一つである。わが国では,長年死因第1位の座を占め,2人に1人ががんを経験し,3人に1人ががんにより死亡している。世界を見ても,開発途上国の発展と共にがんによる死亡者数が年々増加すると考えられていて,2012年は年間820万人であったものが,2030年には1,300万人にもなると予想されている。がんに関する医療費も莫大であり,わが国では年間3.8兆円(2012年)にも上り1),65歳未満では全医療費の13.1%(第1位)の1.5兆円を支出している。医療費だけでなく,がんにより寿命より早く死亡してしまうことによる社会的損失を合わせると,全世界における経済的影響は100兆円にも上ると報告されている2)
 がんによる死亡を防ぐ最も有効な手段は,早期発見・早期治療である。胃がん,結腸がん,直腸がんの5年生存率は,ステージ0,1のいわゆる早期がんでは約90%と非常に高い結果が報告されている3,4)。しかし,わが国の主要5大がんのがん検診受診率は約30%にとどまっている5)。この受診率は他の先進国と比較しても圧倒的に低く6),例えば米国の肺がん,子宮がんのがん検診受診率は80%近くある。わが国でがんが死因第1位である最大の理由は,がん検診受診率が低いことにあると考えられる。

参考文献

1)厚生労働省:平成24年度 国民医療費の概況,2012
2)OECD indicators:Health at a glance 2013, 2013
3)日本胃癌学会:胃がん治療ガイドライン,金原出版,東京,2001
4)大腸癌研究会:大腸癌全国登録1991〜1994年度症例
5)国立がん研究センターホームページ:http://www.ncc.go.jp/jp/
6)OECD health data 2009, 2009
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. 4:026003, 2010
. 6:175-185, 2012

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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