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特集 脂質ワールド Ⅱ.細胞膜と脂質
生体膜リン脂質の脂肪酸非対称性の作られ方
著者: 進藤英雄1
所属機関: 1国立研究開発法人国立国際医療研究センター脂質シグナリングプロジェクト
ページ範囲:P.203 - P.207
文献購入ページに移動 生体膜は細胞の膜としての役割のほかに,シグナル伝達や脂質メディエーター貯蔵としての役割も担う。グリセロリン脂質(以下,リン脂質)は生体膜の主成分の一つであり,グリセロール骨格sn -1位と2位に脂肪酸,3位に極性基を保有している。sn -3位の極性基がホスホコリンであれば,ホスファチジルコリン(phosphatidylcholine;PC)のようにリン脂質の名前は極性基の種類で決まる。2本の脂肪酸は,炭素数や二重結合の数が異なる様々な分子が存在する。通常,生体内のリン脂質中には炭素数14-22,二重結合数は0-6の脂肪酸が多い。中には炭素数が30を超える極長鎖脂肪酸も存在する。更に,sn -1位の脂肪酸の結合様式もエステル,エーテル,ビニル結合と3種類ある。これらの組み合わせで,生体内には1,000分子種程度のリン脂質が存在すると言われている。組織や細胞によって特徴は異なり,それぞれの機能に応じている。細胞内でもその配置には偏りがある。なぜ,このように多様なのか? 生合成の分子メカニズムはどうなっているのか? まだまだ不明点は多いが,近年少しずつわかってきた。本稿では,哺乳動物のリン脂質を中心にまとめたい。
参考文献
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