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特集 脂質ワールド Ⅱ.細胞膜と脂質
細胞膜の曲率と張力をめぐる分子機構
著者: 伊藤俊樹1
所属機関: 1神戸大学バイオシグナル総合研究センター生体膜機能研究分野
ページ範囲:P.214 - P.219
文献購入ページに移動 細胞を形作る生体膜は,脂質分子の二重層とそれを貫通した,あるいは表面的に接着したタンパク質との高度な複合体である。脂質二重層は柔軟な構造体であり,膜脂質分子の非対称性や膜結合タンパク質などの作用により,平面状の膜構造から陥入や突出を伴う三次元曲面へと変化する。このような生体膜の“曲率”を生み出すメカニズムとして,カベオリンをはじめとする膜挿入タンパク質や,曲率を伴う生体膜との結合面を持つBARスーパーファミリータンパク質などが知られている。一方で,脂質二重層の高度な流動性により,生体膜は液体に近い機械的特性を有しており,その一つが“表面張力”すなわち“膜張力(membrane tension)”である。膜張力は,生体膜の性質を規定する重要な物理的パラメーターであると考えられてきたが,その生理的な意義は長い間不明であった。しかし,近年の研究から,膜張力がかかわる生命現象とそれを支える分子メカニズムが明らかになりつつある。本稿では,これら“生体膜の曲率を誘導する因子”と“膜張力を制御・感知する因子”との密接な関連性を中心に,生体膜をめぐる新たな研究展開について論じる。
参考文献
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