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文献詳細

雑誌文献

生体の科学67巻3号

2016年06月発行

文献概要

特集 脂質ワールド Ⅱ.細胞膜と脂質

細胞膜の機能的区画化におけるクラスターとドメインの概念とその制御

著者: 反町典子1

所属機関: 1国立研究開発法人国立国際医療研究センター研究所分子炎症制御プロジェクト

ページ範囲:P.220 - P.226

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 生体を構成するすべての細胞は,細胞表面の受容体を介して環境の変化としての外界からの刺激を受けとり,適切な細胞応答を引き起こすことによって細胞特有の役割を果たしている。刺激の入り口となる受容体の構造や動作機序は様々であれ,すべてに共通する点は細胞膜という脂質二重膜に置かれたなかで素過程を発動させるということである。そしてその際,受容体の多くは,不均一に分布した脂質とタンパク質によって区画化されたドメイン様構造において様々な分子を会合し,分子の局所濃度や衝突頻度を高めることによってシグナルのハブとしての役割を果たす。重要な点は,受容体にリガンドが結合したのち,細胞膜からエンドソームといった時空間にまたがって脂質ドメインはシグナル複合体形成の足場を提供し,これはすなわち細胞表面だけでなく,細胞内のオルガネラにおいても脂質ドメインが存在し,細胞機能発現に重要な役割を果たしているということである。
 筆者らは炎症応答の分子基盤の解明を通じて,免疫難病の治療標的を同定することを目指して研究を行っている。生体において臓器を構築する個々の細胞のほとんどは,細胞外基質あるいは細胞相互の接着により位置情報が決められ,また,その形態の自由度に制限を受けている。一方,球形浮遊状態で体内を循環する免疫細胞は,刺激に応答してダイナミックに形態を変化させながら運動し,可逆的な細胞間あるいは細胞-基質間の接着を形成,消滅させたりしながら,非自己である感染細胞やがん細胞の識別と殺傷,抗原提示,貪食殺菌などを行っている。これらの過程は,受容体を介した刺激により,他の細胞にはみられない制御下で細胞膜のドメイン再構築や大きな容量変化を伴って進行し,更にはそれらを収束させる恒常性維持機構によって支えられている。こうした免疫細胞にユニークな膜ドメインの制御機構の理解は,多くの疾患の病態形成を担う炎症応答の制御に向けた基盤技術開発には有益である。

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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