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文献詳細

雑誌文献

生体の科学67巻3号

2016年06月発行

文献概要

特集 脂質ワールド Ⅲ.新規脂質メディエーターと受容体

新しい脳脂質─ホスファチジルグルコシドとそのリゾ体脂質の生物機能

著者: 長塚靖子1 中嶋和紀1 平林義雄1

所属機関: 1理化学研究所 脳科学総合研究センター神経膜機能研究チーム

ページ範囲:P.227 - P.231

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 最近,生体の脂質に多くの関心が寄せられている。脂質研究を難しくしている原因の一つとして,その膨大な分子種多様性を挙げることができる。筆者らは,いまから十年以上も前に,血球系の分化マーカー抗原として,新奇糖脂質“ホスファチジルグルコシド”(PtdGlc)を発見した1)。その構造は,グルコースを唯一の糖として含む糖脂質とグリセロ型リン脂質とのハイブリッドタイプのリン脂質である。PtdGlcは発達期の脊髄において放射状グリアに特異的に発現し,痛覚と固有感覚ニューロンの投射先を振り分ける機構に関与していた。すなわち,PtdGlc(PG)がホスホリパーゼA2(PLA2)の作用に生じたリゾ体脂質(LPG)が,痛覚ニューロン軸索先端の成長円錐に発現する7回膜貫通型G-タンパク質共役型受容体GPR55を通して軸索進行を反発するために,両者のニューロン軸索の混線を回避していた2)。この意外な結果は,微量な脂質性分子が神経軸索誘導に機能している初めての例である。本稿では,リガンドLPGとその特異的受容体GPR55を中心とした最近の成果を紹介し,脂質研究の新たな可能性を議論する。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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