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実験講座
高密度・多重染色超解像蛍光顕微鏡法IRISの原理と実践
著者: 木内泰1 渡邊直樹12
所属機関: 1京都大学大学院医学研究科神経・細胞薬理学 2京都大学大学院生命科学研究科分子動態生理学
ページ範囲:P.270 - P.276
文献購入ページに移動しかし,分解能がタンパク質のサイズに近づいたため,得られる顕微鏡画像が標的タンパク質の分布を必ずしも正確に反映していないことが問題になっている5,6)。蛍光顕微鏡の分解能は,蛍光標識された二つの物体が分離識別できる間隔だけでなく,物体の標識率によっても決定される。ナイキストのサンプリング定理によると,標識された物体の間隔の2倍以下の範囲では,物体の分布や形状は正確に捉えることはできない5-8)。例えば,20nmの分解能を得るためには10nmに1個の標識が入る必要がある。しかし,抗体の大きさは10nm余りあるため,20nm以下の範囲では抗体同士が空間的に干渉し,その標識率は制限される。また,蛍光タンパク質を融合させた標的タンパク質を発現させた場合,内在性の標的タンパク質との発現量比に応じて標識率が低下してしまう。更に複数種類のタンパク質を同一標本内で可視化することも試みられているが9),蛍光色素の種類が限られているだけでなく,狭い範囲で複数の標的分子を高効率で標識することはより困難である。このため,超解像顕微鏡では分解能が高くなったことで,不均一または低効率で標識された標的タンパク質の分布があらわになりやすい。標的タンパク質の分布を忠実に画像化するためには,より均一かつ高効率な標識方法が必要とされている。筆者らは,この標識における問題を解決するため,標的に結合解離する蛍光プローブを用いた標識方法で,タンパク質の標識率と観察できる種類数に理論上の制限のない超解像顕微鏡法IRIS(Image Reconstruction by Integrating exchangeable Single-molecule localization)を開発した10)。本稿では,IRISの原理と実践について概説する。
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