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特集 認知症・神経変性疾患の克服への挑戦
特集「認知症・神経変性疾患の克服への挑戦」によせて
著者: 岡澤均12
所属機関: 1東京医科歯科大学難治疾患研究所 2東京医科歯科大学脳統合機能研究センター神経病理学分野
ページ範囲:P.280 - P.280
文献購入ページに移動これらの敗北過程で明らかになった問題点は“失敗から学ぶ”貴重な教訓であるが,一般の研究者には意外なほど認識されていない。例えば,アルツハイマー病,パーキンソン病,ポリグルタミン病などでは,凝集タンパク質毒性仮説から可溶性(凝集前)タンパク質毒性仮説へとパラダイムシフトが起こり,アルツハイマー病においても巨大な凝集体である老人斑のみが毒性を持つとする古典的アミロイド仮説から,タウオパチーの発見を契機にアミロイド→タウへの相互関係,近年の可溶性アミロイドによるシナプス障害など,幾度となく仮説の改訂が行われている。これらの経緯から,プレクリニカル期,更には脳内凝集体の存在しない超早期(Phase 0)の病態解明と治療介入の必要性が考え始められている。また,プリオノイド仮説,タンパク質毒性に加えて存在するRNA毒性,あるいは前頭側頭葉変性症(FTLD)における凝集に代わるlow complexityタンパク質(天然変性タンパク質)集合体など,新たな概念も提唱されている。認知症・神経変性疾患を克服するためには,これまでの歴史を正しく認識し,新たな知見を取り入れ,更に,最新技術(網羅的技術,数理科学など)を取り入れた革新的病態解析と,得られた分子標的に対する根本治療法の開発が必要である。
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