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文献詳細

雑誌文献

生体の科学67巻4号

2016年08月発行

文献概要

特集 認知症・神経変性疾患の克服への挑戦 Ⅲ.新たな技術開発によるチャレンジ

新しいタウ抗体の開発と新たな認知症予防薬開発の試み

著者: 富山貴美1

所属機関: 1大阪市立大学大学院医学研究科認知症病態学

ページ範囲:P.335 - P.339

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 異常なタンパク質が脳に蓄積して発症する変性性認知症には,Aβ(amyloid β protein)とタウが蓄積するアルツハイマー病(Alzheimer's disease;AD),タウまたはTDP-43が蓄積する前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia;FTD),αシヌクレインが蓄積するレビー小体型認知症などがある。これらタンパク質が脳内でオリゴマーを形成し,神経細胞の機能を障害することで病気が発症すると考えられている。認知症の中で最も研究が進んでいるのが,最も患者数の多いADである。ADでは,まずAβが凝集して脳に沈着(老人斑)し,次に過剰リン酸化されたタウが凝集して神経細胞内に蓄積(神経原線維変化,neurofibrillary tangle;NFT)したのち,神経細胞が死に始め,最後に認知症を発症する。老人斑が脳に現れ始めてから認知症を発症するまでに,実に20年以上の歳月がかかる。
 ADの原因はAβの凝集・沈着であるというアミロイド仮説に基づき,これまで多くのAβ標的薬が開発されてきた。しかし,今日に至るまで,有効性が確認され上市に至ったものはない。その原因は,投与時期が遅すぎることにあると考えられている。Aβを取り除くのなら,それは神経細胞が死に始める前でないと意味がない。これはすなわち,Aβ標的薬の役割は治療ではなく予防にあるということを意味する。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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