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文献詳細

雑誌文献

生体の科学67巻4号

2016年08月発行

文献概要

解説

細胞内温度を測定できるか─論争を整理する

著者: 清中茂樹1 坂口怜子2 森泰生1 吉崎武尚3

所属機関: 1京都大学大学院工学研究科合成・生物化学専攻 2京都大学物質─細胞統合システム拠点(iCeMS) 3京都大学大学院工学研究科高分子化学専攻

ページ範囲:P.363 - P.368

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 体温を一定に保つ内温動物には,外気温の変化に応じて体内の熱産生を制御する分子機構が備わっている。哺乳動物の熱産生に関しては,骨格筋あるいは褐色脂肪細胞組織の特定の細胞内小器官からの熱産生が提唱されたが,実際の体温変化への寄与を含めて不明瞭な点もあり,熱産生の定量的な議論はほとんど行えていない。その主な原因として,細胞内の熱産生を直接的に評価する方法の欠如が挙げられていた。最近になり,複数の細胞内温度センサーが開発され細胞内温度の計測例が増えつつある。また,細胞内温度の不均一性など新たな現象も見つかってきた。そのような状況下,巨視的かつ均一系に対してのみ適用可能な熱拡散式に立脚した場合,数℃の温度上昇を伴うほどの熱産生は細胞内では起こらないという報告がなされた。その一方で,細胞という環境を踏まえると十分に細胞内局所の温度変化は起こり得るという反論も報告された。そこで,本総説では,最近急速に進みつつある細胞内温度センサー開発の最近の研究例,および均一系での熱拡散式を用いた理論的な議論とその問題点について述べ,細胞内で起こり得る温度変化について論じたい。

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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