icon fsr

文献詳細

雑誌文献

生体の科学67巻6号

2016年12月発行

文献概要

特集 時間生物学の新展開

末梢概日時計システム

著者: 八木田和弘1

所属機関: 1京都府立医科大学大学院医学研究科統合生理学

ページ範囲:P.522 - P.526

文献購入ページに移動
 “末梢時計”は,主として哺乳類概日時計研究から生まれてきた概念である。哺乳類の“中枢時計”である視交叉上核に対する,それ以外の組織・細胞に備わっている概日時計のことを指す。つまり,たとえ中枢神経系であっても,視交叉上核以外は中枢時計によって調律される“末梢時計”ということになる。哺乳類の概日リズムは,視交叉上核を破壊することで個体レベルの生理機能リズムが消失することが古くから知られており,視交叉上核が概日リズムの中枢で,末梢臓器のリズムを支配しているという概念が確立されていた。そのため,他の生物種と比較しても“中枢”と“末梢”という区別がより明確であったことが,哺乳類において“末梢時計”というカテゴリーが生まれてきた理由の一つと考えられる。
 ただ,現在では広く受け入れられている末梢時計という概念であるが,その歴史はそれほど古いものではない。末梢時計の概念確立には,1997年の哺乳類における時計遺伝子の同定が深くかかわっている。しかし,それ以前にも視交叉上核以外の組織における概日リズム解析の研究があり,それらの知見の蓄積があったからこそ,その上に末梢時計の概念が速やかに体系化されたと言える。

参考文献

. 122:33-47, 1977
. 76:5962-5966, 1979
. 1:67-72, 1984
. 272:419-421, 1996
. 93:929-937, 1998
. 288:682-685, 2000
. 292:278-281, 2001
. 119:693-705, 2004
. 382:810-813, 1996
. 28:4950-4960, 2014
. 14:2950-2961, 2000
. 350:aac4250, 2015
. 342:1243417, 2013
. 158:659-672, 2014
. 302:255-259, 2003
. 69:81-91, 2003
. 17:141-151, 2003
. 588:459-465, 2014
. 5:e9855, 2010

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?