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文献詳細

雑誌文献

生体の科学67巻6号

2016年12月発行

文献概要

特集 時間生物学の新展開

神経細胞の膜電位制御からみる哺乳類の睡眠時間制御

著者: 桑島謙12 大出晃士13 上田泰己13

所属機関: 1東京大学大学院医学系研究科機能生物学専攻システムズ薬理学教室 2東京大学大学院医学系研究科外科学専攻麻酔学教室 3理化学研究所生命システム研究センター合成生物学研究グループ

ページ範囲:P.541 - P.545

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 中枢神経系を有するほぼすべての生物が,睡眠をとると考えられている。睡眠を奪う断眠状態を継続すると死に至ることから1),睡眠は生命維持にかかわる重要な生理現象であり,更に記憶,学習などの高次機能にも関与することが知られている。睡眠と覚醒を繰り返す睡眠覚醒サイクルは,明らかに概日リズムの制御を受ける。その一方で,概日時計をつかさどる視交叉上核を破壊したサルの実験では,睡眠をとる時間は1日のなかで分散するものの,1日の総睡眠量(睡眠時間)はなお一定に保たれることから2),概日リズムとは関係なく,動物は覚醒時間に対して一定量の睡眠時間を確保するよう制御されていることがわかる(睡眠恒常性)。これら概日リズムと睡眠恒常性の関係を端的に表現した古典的なモデルとして,Borbélyらの提唱した2プロセスモデルがある3)(図1)。これは,睡眠負債を反映する睡眠過程(プロセスS)と概日リズムに伴う入眠閾値を反映する概日過程(プロセスC)の二つの因子で,睡眠覚醒制御を説明するものである。プロセスSは覚醒に伴って蓄積し睡眠によって解消される過程であり,概日リズムと独立した睡眠恒常性を担うものである。本稿では,睡眠時間を制御するプロセスSの機構に迫る過去の知見と共に,近年筆者らが提唱したCa2+依存性過分極経路の重要性について議論したい。

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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