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文献詳細

雑誌文献

生体の科学68巻1号

2017年02月発行

文献概要

特集 大脳皮質—成り立ちから機能へ

大脳抑制性神経細胞の運命決定と機能分化

著者: 谷口弘樹1

所属機関: 1マックスプランクフロリダ研究所

ページ範囲:P.29 - P.33

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 大脳皮質は,知覚,認知,記憶,行動など,脳の高次機能をつかさどる中枢器官である。大脳皮質を構成する細胞には,大きく二つに分けて,グルタミン酸を伝達物質とする興奮性錐体細胞とGABAを伝達物質とする抑制性神経細胞が存在する。興奮性錐体細胞は,皮質内外に長い軸索を投射し,層,領野といった皮質機能単位からの出力情報伝達を担う。これに対し,抑制性神経細胞は,他の神経細胞を局所的に神経支配し,神経活動のレベルを一定に保ち,その多様な時空間パターンを制御している。近年,抑制性神経細胞を特異的に操作するためのマウスリソースが整備されはじめ,光遺伝学をはじめとする様々な機能解析ツールと組み合わされることにより,大脳皮質抑制の,発生,知覚処理,行動発現,可塑性などにおける広範な役割が明らかにされつつある1)。また,大脳機能における重要性と一致して,抑制制御の異常は神経疾患と深くかかわりがあることが明らかになりつつある2,3)。抑制性神経回路機能の構造的基盤を考えるうえで特に重要なことは,細胞タイプの多様性である。抑制性神経細胞は,解剖学的,生理学的,神経化学的に分類される非常に多くのサブタイプを有し,多彩な抑制制御に対応していると考えられている1,4,5)。しかしながら,抑制性神経細胞の多様性が,いつ,どこで,どのように確立されるのかという基本原理は,解明の途についたばかりである。本稿では,どのような因子が抑制性神経細胞の運命決定に関与し,神経機能,回路編成に影響を及ぼすのかを解説する。

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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