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文献詳細

雑誌文献

生体の科学68巻1号

2017年02月発行

文献概要

特集 大脳皮質—成り立ちから機能へ

匂い情報の皮質処理─嗅皮質の構造と機能について

著者: 山口正洋1

所属機関: 1高知大学医学部生理学講座(統合生理学)

ページ範囲:P.64 - P.68

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 地球上には様々な化学物質が存在し,その種類は数百万から数千万オーダーと言われている。嗅覚は,生物が自分をとりまく環境を化学物質を手がかりに理解して,適切に行動することによって生存の機会を拡大すべく進化してきた。嗅覚は,感覚系のなかでも特に個体の行動と密接に関連した感覚である。匂い分子受容体の発見を契機として,匂い分子がどのように受容されて匂い情報が処理されるか,感覚系の常として末梢から中枢に向かって理解が進んできた。嗅覚一次感覚野である嗅皮質は,当初匂いがどんな種類のものかを同定し,対象物の固有の匂い知覚を生み出す領域ではないかと想定された。しかし近年,嗅皮質の主要な働きは,匂いに意味や価値を付加し,匂い入力をとるべき行動に結びつけることではないかと考えられるようになってきた。
 本稿では,まず嗅皮質の解剖学的特性を紹介し,匂い情報がどのように受容されて嗅皮質に到達するかを説明する。そして,嗅皮質が扁桃体や前頭前皮質など情動や価値判断を担う脳領域と密接な神経連絡を作っていること,ニューロンの活動性が匂いの意味や価値とよく対応していることを,嗅皮質の幾つかの領域の事例をもとに紹介する。このような嗅皮質の機能は,生物にとっての嗅覚の役割をよく反映していると思われる。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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