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文献詳細

雑誌文献

生体の科学68巻2号

2017年04月発行

文献概要

特集 細菌叢解析の光と影

特集「細菌叢解析の光と影」によせて

著者: 中川一路1

所属機関: 1京都大学大学院医学研究科微生物感染症学分野

ページ範囲:P.96 - P.96

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 もし,手元にインターネットにつながっているPCがあるなら,NCBIやDDBJといった遺伝子データベースにアクセスすると,ありとあらゆる生物種の遺伝情報が入手できる。更にLinuxのようなOSの少しの知識があれば,オープンソースのソフトウェアを入手してPC上で解析ができる。今は,そのような時代になっている。一度の解析で数Gbにも及ぶ塩基配列が一度に入手可能な次世代型シーケンサーの登場によって,今では,個々の微生物ではなく,その環境に存在するほぼすべての微生物の情報を一度に取得できるようになってきている。今この瞬間にも世界中の研究者が,莫大な量の情報をデータベースに登録している状況である。
 今回は,「細菌叢解析の光と影」というタイトルで企画を立てさせていただいた。“細菌叢解析の光”というのは,言うまでもなく,これまで実体のわからなかった細菌叢全体の設計図が入手できることになったことであろう。それぞれの環境に適応した微生物の“群れ”を一度に解析することによって,生体の常在菌であれ,環境中の細菌叢であれ,その構成している菌の種類については,ほぼ出揃ってきている。例えば,一般書にも腸内細菌の特集が組まれているのをみれば,単に「お腹の具合が悪い」と思っていて,ヨーグルトを食べるとなんとなく良くなった,というごく日常的に当たり前と思っていた現象を,分子のレベルで話ができるようになってきたのである。それだけではなく,がんや生活習慣病(肥満など)にも細菌叢の変化が影響していることも明らかとされてきている。環境中の微生物であれば,「肥料を土にいれると野菜が沢山とれるようになった」といった経験的に知っている事象を,「土の中の細菌叢がこんな風に変化した」と,細菌叢の変化で説明できることからも,そのインパクトの大きさがわかる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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