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特集 細菌叢解析の光と影 Ⅱ.病原細菌
現在のメタゲノム解析からは見えてこない細菌ゲノムの菌株間多様性とそのメカニズム─大腸菌を例として
著者: 小椋義俊1 中島遥子1 林哲也1
所属機関: 1九州大学大学院医学研究院細菌学分野
ページ範囲:P.102 - P.107
文献購入ページに移動このアクセサリ領域は全ゲノムの半分近くに及ぶこともあり,各菌株や系統の“個性”とも言える表現型を規定する。こういった領域は,水平伝播された外来性ゲノムであることが多く,特に病原細菌のように株による形質の違いがしばしば問題となる細菌においては,極めて重要な遺伝的要素である。しかし,現在の細菌叢解析では,菌株レベルでの組成やアクセサリ領域を含めた遺伝子構成に関する高精度な情報を得ることは極めて困難である。これは,16S菌叢解析の解像度の低さや,メタゲノム解析で再構築されるゲノム配列にみられる高度な断片化(不完全性)による。後者は外来性ゲノムにしばしば付随する挿入配列(insersion sequence;IS),トランスポゾン,ファージなどの可動性遺伝因子が繰り返し存在することなどに起因している。また,集団内に,同一菌種の遺伝的に近い菌株が複数,しかも同じぐらいの割合で存在した場合,現在のメタゲノム的手法では,それぞれを区別して,ゲノムの再構築を行うことはほぼ不可能である。
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