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文献詳細

雑誌文献

生体の科学68巻2号

2017年04月発行

文献概要

特集 細菌叢解析の光と影 Ⅲ.腸内細菌

肥満とがん─腸内細菌の関与について

著者: 大谷直子1

所属機関: 1大阪市立大学大学院医学研究科病態生理学(生理学第一教室)

ページ範囲:P.118 - P.122

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 宿主であるヒトとその腸内に存在する腸内細菌叢は,お互い共生関係にある超生命体(super-organism)を形成し,お互いのホメオスタシス(恒常性維持)を保っていると考えられている1)。腸内細菌は,宿主が代謝できない物質を代謝して腸内細菌自身の生命維持のためのエネルギーを産生し,一方,宿主であるヒトはその代謝産物を生命活動に利用する。また,腸内細菌は宿主に侵入してくる病原微生物の防御にも役立っている。しかし,このような恒常性が崩れると,様々な疾患の発症につながる可能性があり,がんもそのような腸内細菌のアンバランスにより影響を受ける疾患の一つであろう。
 正常細胞ががん化する場合,通常,多くのケースでは遺伝子変異に起因すると考えられる。しかし,腸内細菌の持つ毒素やタンパク質,腸内細菌による代謝産物により,発がんの鍵となるがん遺伝子産物が活性化したり,DNA損傷や遺伝子変異を促進し,それが発がんにつながるケースが考えられる。また,腸内細菌により発がんの影響を受ける標的臓器は,腸管はもちろんのこと,腸管以外の全身の臓器も腸内細菌の代謝物や菌体成分などに曝され,影響を受けていることが次々と報告されている。特に肝臓は,腸管から吸収されたそれらの物質が門脈などを通じてほとんどが肝臓に運ばれ,その後,一部は胆汁中に排出されて,また腸管から再吸収される“腸肝循環”という循環を繰り返し,長期にわたって腸内細菌の影響を受ける臓器であると考えられる(図1)。

参考文献

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23)服部正平監修:ヒトマイクロバイオーム研究最前線─常在菌の解析技術から生態,医療分野,食品への応用研究まで.TNS,東京,2016

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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