文献詳細
文献概要
特集 細菌叢解析の光と影 Ⅲ.腸内細菌
腸内細菌叢とがん,炎症,免疫療法
著者: 飯田宗穂1
所属機関: 1金沢大学医薬保健研究域医学系革新予防医科学
ページ範囲:P.123 - P.126
文献購入ページに移動細菌と免疫系の関連ということで言えば,細菌と宿主(ヒト)の細胞を結ぶ最も重要な分子はToll様受容体(Toll-like receptor;TLR)であろう。TLR1から10までの10種類のTLRは,それぞれ微生物の種々の構造を認識してシグナルを細胞内に伝達する。TLR2は細菌細胞壁中のペプチドグリカンを認識し,TLR4は細胞壁中のリポ多糖(lipopolysaccharide;LPS),TLR5では鞭毛の構成物質であるフラジェリン,TLR9は細菌の非メチル化オリゴDNAであるCpGオリゴヌクレオチドを認識する。白血球上のこれらのTLRは,病原細菌の侵入をそれぞれの構造物を認識することで感知し,細胞内下流の転写因子NFκBの活性化を介して多種の炎症性サイトカインを発現する。炎症が起こるところに獲得免疫が誘導され,細菌への防御がなされるわけである。TLRは広く白血球以外の細胞にも発現が見つかっており,病原菌に対する防御のみならず,粘膜上皮のバリアやリンパ組織の成長など,普段からも重要な役割を担っていることが想定されている。平時に100兆を超す数で存在する腸内細菌叢は,その代謝産物により宿主の恒常性維持に一役買っており,TLRからのシグナルは細菌叢と宿主の細胞をつなぐ一端を担っていると考えられている3)。
参考文献
掲載誌情報