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特集 核内イベントの時空間制御 Ⅰ.ゲノム解析
エピゲノム解析─ヒストン修飾データの取得と意味
著者: 木村宏1
所属機関: 1東京工業大学科学技術創成研究院細胞制御工学研究センター
ページ範囲:P.199 - P.203
文献購入ページに移動 ヒストンは,DNAと強く結合し,クロマチンの基本単位であるヌクレオソームを形成する。そのため,特定のゲノム領域上のヒストンの翻訳後修飾が遺伝子発現の促進や抑制などの制御に働く。したがって,解析対象となる細胞中におけるゲノム上のヒストン修飾の局在を明らかにすることで,個々の遺伝子やエンハンサーの状態を知ることができる。特に,ヒストンH3のN末端領域の翻訳後修飾は遺伝子発現制御と高い相関がある。一般に,活発に転写される遺伝子の転写開始領域にはH3の4番目のリジン残基のトリメチル化(H3K4me3)と27番目のリジン残基のアセチル化(H3K27ac)が,エンハンサー領域には4番目のリジン残基のモノメチル化(H3K4me1)とH3K27acが,それぞれ存在する。転写されている遺伝子領域にはH3の36番目のトリメチル化(H3K36me3),転写が抑制されたヘテロクロマチン領域には9番目のトリメチル化(H3K9me3)や27番目のトリメチル化(H3K27me3)が濃縮されている。ゲノムワイドのヒストン修飾局在は,クロマチン免疫沈降と大規模塩基配列解析(ChIP-seq)により解析される。大規模プロジェクトや国際コンソーシアムなどにより,近年多くの細胞種でヒストン修飾エピゲノム情報が得られている。これらの情報は,発生や分化に伴う遺伝子発現制御機構や病態変化の要因を知るうえで非常に有用であると考えられる。
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