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特集 核内イベントの時空間制御 Ⅴ.数理的アプローチ
数理的解析─転写の熱力学と情報処理
著者: 井原茂男123
所属機関: 1東京大学先端科学技術研究センター 2東京大学大学院数理科学研究科 3東京大学生物医学と数学の融合拠点(iBMath)
ページ範囲:P.251 - P.255
文献購入ページに移動Landauer1)やBennett2)らの“Information is Physical”という標語に要約されるように,情報処理の熱力学的な意味も明らかにされつつある。生命過程を初期に情報の観点から解析してきた人は,量子暗号や量子計算,人工知能の開拓者でもあった。最近流行りの人工知能,ニューラルネットワークの提唱者として著名なHopfieldは,1970年代に生体高分子の合成作用の物理過程について研究し3),その生命科学と物理の学際的で先駆的な寄与に対し,Diracメダルが贈られた。最近,確率過程と熱力学的な観点から,ポリメラーゼのキネティクスへのアプローチが注目されている4,5)。そこで本稿では,最近の真核生物の転写研究を踏まえ,既に本誌でご紹介した執筆者のこれまでの研究6,7)も俯瞰しつつ,確率過程の観点から転写の熱力学と情報処理を議論してみたい。
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