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特集 心臓の発生・再生・創生
特集「心臓の発生・再生・創生」によせて
著者: 栗原裕基1
所属機関: 1東京大学大学院医学系研究科代謝生理化学
ページ範囲:P.508 - P.508
文献購入ページに移動 川崎病,高安病,Vogt-小柳-原田病をはじめ,日本人の名前が冠せられた疾患はいくつかあるが,“高尾症候群”という疾患名をご存知であろうか? 東京女子医科大学循環器小児科の初代教授であった高尾篤良博士は,Fallot四徴症など,ある種の先天性心疾患が特徴的な顔貌を伴うことを,“円錐動脈幹異常顔貌症候群”という疾患名で1976年に世界に先駆けて報告した。その後,胸腺低形成による免疫不全を主徴とする“DiGeorge症候群”や,Shprintzen博士によって報告された“Velocardiofacial症候群”と同一の疾患群であることがわかり,現在では同一の染色体領域に異常を認めることから,“染色体22q11.2欠失症候群”と総称されている。しかし,高尾先生の業績は忘れられることはなく,今でも海外の研究者による論文にも「chromosome 22q11.2 deletion syndrome(also known as Takao syndrome)」としてしばしば引用されている。
この症候群は,心臓の発生学と臨床医学,さらにはヒト遺伝学との橋渡しをしてきたという点でも循環器病学における意義は大変に大きい。そのことを極めて早い時期に炯眼をもって予見し,先天性疾患を基盤とした発生学,遺伝学をわが国で育てたのも高尾先生であった。そして,お名前そのままの温厚篤実なお人柄で,小児科医として患者さんやご家族から大変慕われ,厚く信頼されていたという。優れた臨床医であり研究者,さらに教育者として,筆者を含むこの領域の研究者にとっては常に仰ぎ見る存在であった。
この症候群は,心臓の発生学と臨床医学,さらにはヒト遺伝学との橋渡しをしてきたという点でも循環器病学における意義は大変に大きい。そのことを極めて早い時期に炯眼をもって予見し,先天性疾患を基盤とした発生学,遺伝学をわが国で育てたのも高尾先生であった。そして,お名前そのままの温厚篤実なお人柄で,小児科医として患者さんやご家族から大変慕われ,厚く信頼されていたという。優れた臨床医であり研究者,さらに教育者として,筆者を含むこの領域の研究者にとっては常に仰ぎ見る存在であった。
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